04.14
Sat
 
このブログではたいへん久しぶりになります。根倉野蜜柑です。
山の上の大学に迷い込んだまま入院し、さいきん退院してきました。現在は蜜柑が小説を書き、本体が論文を書き、もう一部が翻訳を行なっています。三竦みを反復横跳びをすることによってそれぞれの苦痛から身を躱してゆく作戦です。全然うまくいってません。

今回は翻訳をしている平戸懐古がここ数年の成果をまとめたので、その告知記事です。いま最も活発なのは本体の論文だの研究発表だのの活動ですが、そこに蜜柑と懐古を結びつけるべきか否か迷っているので、そこは保留ということで。



2018年5月6日、第26回文学フリマ東京、懐古文庫【ア-19】ブースにて、平戸懐古はゴシック小説の始祖ホレス・ウォルポール(Horace Walpole, 1717-1797)の掌篇集『象形文字譚集』(Hieroglyphic Tales, 1785)を発行します。Webカタログはこちら。
表紙はこんな感じになります。本邦初訳の全訳、お手頃な文庫サイズです。

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【帯表面】
怪奇小説、SF小説、探偵小説……その前身ゴシック・ロマンスの生みの親による
奇想/シュルレアル/衒学/ナンセンス/パロディ/艶笑/メタフィクション/掌篇集

【帯裏面】
『象形文字譚集』は疑う余地なく、世界の創造の少し前に書かれたものであり、それ以来まだ発見されていない無人島クランプクラギッリの山中で、口承によって保存されてきたものである。――本書「序文」より

〈本書に登場する固有名詞〉
ヘルメス・トリスメギストス/マホメット/ホメロス/『イリアス』/ハンニバル/ダヴィデ/ヨナタン/『詩篇』/レオニダス/イグナチウス・ロヨラ/ソロモン/シェバの女王/『雅歌』/バベルの塔/ミレジアス/アン女王/グロティウス/孔子/ジョセフ・バンクス/ダニエル・ソランダー/レアンドロス/ユピテル/セレンディップ/アブラハム/ハガル/サラ/イシュマエル etc...

【内容紹介】
話の下手なシェヘラザードが不眠症のシャフリヤールに臨む「新説・アラビア夜話」。生まれていない姫君と死んでいる王子の邂逅しない「王とその三人の娘」。ソロモンとシェバの女王が痴話喧嘩する雅歌の誕生秘話「サイコロ箱」……。『オトラントの城』によってゴシック・ロマンスを創出したホレス・ウォルポールが、別荘ストロベリー・ヒルの印刷工房にて六部だけ発行した幻の奇想掌篇集。全六篇にさらに貴重な一篇を付して収録。

【作者紹介】
ホレス・ウォルポール Horace Walpole (1717-1719)
英国の政治家、文筆家。第四代オーフォード伯爵。父親は英国の初代首相、ロバート・ウォルポール。政治パンフレットや知人への書簡を旺盛に著すが、別荘ストロベリー・ヒルに中世教会建築の意匠を凝らした改築を行ない、美術蒐集に没頭したことで知られる。中世イタリア由来の文書の翻訳と偽って匿名出版した『オトラントの城』(国書刊行会、他)が公表を博し、作者として名乗り出ると共にゴシック・ロマンスという新たなジャンルを宣言し、その大流行を引き起こした。他に邦訳された作品には、演劇「謎の母」(『ゴシック演劇集』国書刊行会)や、短篇小説「マダレーナ」(『怪奇と幻想』第2号)がある。

だいたいそういう内容です。
『オトラントの城 (The Castle of Otranto, 1764)』が夢の光景から筆を起こした作品であることは有名ですが、本書のうち数篇も即興で書かれたことが明言されており、シュールレアリズムにオリエンタリズム、ナンセンスにメタフィクションと、文学の冒険に満ちたバラエティ豊かな作品集になっています。
平戸も蜜柑もポオ以前の小説にミステリらしい仕掛けが登場するたびに狂喜乱舞する奇病にかかっていますが、本作もまた、ポオ以前のミステリと呼べる内容になっていて、このことも周知されれば嬉しいです。

数年の成果をまとめたものと書きましたが、本書は平戸がこれまでサークルれうにおんの発行する文芸雑誌「こ・めでぃうむ」に訳載してきた『象形文字譚集』収録作を一冊にまとめたものです。いずれも初訳、具体的には以下の通り。

【初出】
20151123号「新説・千夜一夜物語 (A new Arabian Night's Entertainment)」
20161123号「王とその三人の娘 (The King and his three Daughters)」
20170507号「サイコロ箱 ――おとぎ話 (The Dice-Box: A Fairy Tale)」
 同  号  「桃入りブランデー ――ミレー人の物語 (The Peach in Brandy: A Milesian Tale)」
20171123号「ミ・リ ――中華のおとぎ話 (Mi Li: A Chinese Fairy Tale)」
 同  号  「真の愛の物語 (A true Love Story)」

今回、懐古文庫と号して発行する文庫本は、以上の掌篇六話の訳を練り直し、「序文」と「あとがき」、そして本作の初版に収録されず後世の研究が手稿の形で発見した幻の七話目「鳥の巣」を訳し加えた『象形文字譚集』完全版といえるものです。「こ・めでぃうむ」収録時に「象形文字譚」と題してきた書名に「集」の一字を書き加えたのは、そのささやかな表明です。

したがって、本書の構成は以下のようになります。

【目次】
象形文字譚集
 序 文
 第一話 新説・アラビア夜話 (※初出時から改題)
 第二話 王とその三人の娘
 第三話 サイコロ箱 ――おとぎ話
 第四話 桃入りブランデー ――ミレー人の物語
 第五話 ミ・リ ――中華のおとぎ話
 第六話 真の愛の物語
 あとがき
訳者解題
鳥の巣

古典のパロディやオマージュ、大量の固有名詞、作者の知人への当てこすりなどが横溢する作品であるため、全篇に訳註を備えました。小説の翻訳には註をつけるべきではない、とする意見があるのは知っていますが、ブラウザの検索窓と向き合いながら本書を読み進める面倒臭さは読者の気を挫くことにしか繋がらないだろうと考え、このように判断しました。ご理解ください。訳者解題には本書のこと作者のこと、また本篇に註記しなかった関連情報などを書いています。どこか一ヶ所でも面白く読んでいただければ嬉しいです。

また『象形文字譚集』の発行に合わせ、第26回文学フリマ東京では、サークルれにおん【D-08】の新刊「こ・めでぃうむ」20180506号に、ホレス・ウォルポールが二十代に書いた掌篇「妖精の物語 (A Fairy Tale, 1743)」を訳出しています。やはり本邦初訳、おそらく日本語ではほとんど言及もされていません。webカタログはこちら。『象形文字譚集』と比較すると大変に面白いので、こちらも合わせてお読みいただければ幸いです。
ちなみに本誌には蜜柑もゴシック短篇「廃墟の犬」を載せています。また蜜柑は今回、エアミステリ研究会【ア-11】の新刊にも一年半ぶりに寄稿し、ミステリ短篇「クイーン陛下の統べる国」を載せています。こちらもよろしくお願いいたします。



文学フリマ東京で本邦初訳のゴシック短篇を五冊にまとめた英国ゴシック文庫の活動に憧れ、いきおいに任せて懐古文庫などというものを立ち上げてしまいましたが、今後の予定はほとんど決まっておりません。研究の合間にゆるくやっていくつもりです。
メルヴィル・D・ポーストのランドルフ・メイスン連作の未訳短篇に取り掛かっているところですが、お披露目はいつになることやら。
ウォルポールにもまだ訳してみたい作品がありますし、『象形文字譚集』翻訳の過程でバイロンの詩劇にも面白いものを見つけましたし、様々に目移りしている最中です。なにかしら怪奇幻想探偵小説に貢献できることをやってゆければと思います。
それではまたいつか、いずれかの名前でどこかしらでお会いできれば幸いです。
11.05
Sun
 2017年11月23日(日)に開催される第25回文学フリマ東京にて、サークル「れうにおん」(twitter:@reu2on)は短篇小説中心の文芸雑誌『こ・めでぃうむ』の最新号、ver.20171123の発行を行います。

 ブースは【D-41】とのことです。webカタログはこちら

 今号の掲載作など、詳しくはサークルれうにおんの情報を掲載するこちらのブログ記事(http://reu2on.blog.fc2.com/)をご覧ください。

 サークルれうにおんはtwitterでも情報を発信しております。最新の情報はまずツイッターに載ることと思いますので、併せてご覧ください。 (みかん)
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